東京地方裁判所 昭和46年(特わ)6号 判決 1971年12月25日
本籍
兵庫県芦屋市川西町七四番地の一
住居
東京都北区西ケ原三丁目一六番四号
会社役員
森茂太郎
昭和八年六月二九日生
右の者に対する頭書被告事件について、当裁判所は検察官佐藤道夫出席のうえ審理をとげ、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役六月および罰金九〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、東京都中央区入船町三丁目一番地の一に本店を有する英雄海運株式会社および森商事株式会社・大阪市東区北久宝寺町五丁目四五番地の一に本店を有する英雄タンカー株式会社並びに同市西区京町堀四丁目一八番地に本店を有する森石油株式会社の各代表取締役をしているものであるが、自己の所得税を免れる目的で、自己所有株式の一部を他人名義としてこれに対する配当所得を除外するとともに、右四社から他人名義で役員報酬および役員賞与を受領するなどして架空名義および無記名の預金を蓄積する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ
第一、昭和四二年分の実際課税総所得金額が六三、一二〇、〇〇〇円あつたのにかかわらず、昭和四三年三月一一日東京都北区王子三丁目二二番一五号所在の所轄王子税務署において、同税務署長に対し、課税総所得金額が二三、三四五、〇〇〇円で、これに対する所得税額が六、一三〇、八〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて同年分の正規の所得税額二一、七七六、五〇〇円と右申告税額との差額一五、六四五、七〇〇円を免れ(別紙第一、第三のとおり)
第二、昭和四三年分の実際課税総所得金額が八三、九二九、〇〇〇円あつたのにかかわらず、昭和四四年三月八日前記所轄王子税務署において、同税務署長に対し、課税総所得金額が二七、四八六、〇〇〇円で、これに対する所得税額が八、二九六、四〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて同年分の正規の所得税額三〇、一二六、二〇〇円と右申告税額との差額二一、八二九、八〇〇円を免れ(別紙第二、第三のとおり)
たものである。
(証拠の標目)
一、被告人の当公判廷における供述および第一回公判調書中被告人の供述記載部分
一、被告人の検察官に対する各供述調書(二通)
一、被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書(九通)
一、被告人作成の「架空人件費について」「架空名義預金について」と題する各書面
一、清水孝之助、池田誠孝の検察官に対する各供述調書
一、森勘太の検察官に対する供述調書
一、池田誠孝の大蔵事務官に対する昭和四五年二月二〇付、同年七月二一日付各質問てん末書
一、検察事務官柳沢忠幸作成の電話聴取書
一、所得税確定申告書(昭和42年分、同43年分)二通(昭和四六年押第九八四号の二四、二五)
一、税務調査綴一綴(昭和四六年押第九八四号の二三)
一、大蔵事務官岩田稔作成の調査書(給与・賞与源泉徴収税額明細表)
別紙第一、第二の1について
一、大蔵事務官高橋昌作成の各調査書(関係会社持株明細表、配当金支払明細表)
一、英雄海運株式会社の総勘定元帳二冊、同会社の配当金明細表一綴(昭和四六年押第九八四号の二、三、四)
一、英雄タンカー株式会社の総勘定元帳二冊、同会社の基本書類一綴(昭和四六年押第九八四号の一四、一五、一六)
一、森石油株式会社の総勘定元帳二冊、同会社の株式配当金支払明細、利益金処分、役員賞与金支払明細一綴(昭和四六年押第九八四号の二一、二二、一八)
一、英雄海運株式会社、英雄タンカー株式会社、森石油株式会社の各株主名簿(昭和四六年押第九八四号の五、一三、一九)
別紙第二、第二の3について
一、清水孝之助作成の「経費の自己否認について」と題する各書面(森石油株式会社分、英雄タンカー株式会社分)
一、清水孝之助の大蔵事務官に対する各上申書三通
一、池田誠孝作成の「別口金銭出納帳について」「架空名儀普通預金について」「経費の自己否認および処分変更について-森商事株式会社分-」「経費の自己否認および処分の変更について-英雄海運株式会社分-」と題する各書面
一、森道子の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、南明夫の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、金銭出納帳写等一袋、英雄海運株式会社の所得税源泉徴収簿保険料控除申告書(昭和43年分)一綴、同会社の所得税源泉徴収簿(昭和42年分)一綴、英雄タンカー株式会社の金銭出納帳二冊、同会社の旅費差額入金明細帳一冊、同会社の普通預金出入明細帳一冊、同会社の会社基本書類一綴、森石油株式会社の金銭出納帳一冊、同会社の株式配当金、利益処分、役員賞与金支払明細一綴、同会社の所得税源泉徴収簿兼賃金台帳二冊(昭和42年分、同43年分)(昭和四六年押第九八四号の一、六、七、九、一〇、一一、一二、一六、一七、一八、二〇)
(法令の適用)
判示第一、第二の各所為は所得税法第二三八条第一項にそれぞれ該当する。
情状に鑑み、懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第四八条による各刑期および金額の範囲内において(判示第二の罪が重い)、被告人を懲役六月および罰金九〇〇万円に処まる。
右罰金を完納することができないときの換刑処分につき、刑法第一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとする。
なお情状酌量して刑法第二五条第一項を適用し、二年間右懲役刑の執行を猶予する。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 杉山忠雄)
別紙第一 修正損益計算書
森茂太郎
自昭和42年1月1日
至昭和42年12月31日
<省略>
別紙第二 修正損益計算書
森茂太郎
自昭和43年1月1日
至昭和43年12月31日
<省略>
別紙第三 税額計算書
森茂太郎
<省略>